堀文子の言葉ーひとりで生きるー求龍堂

私はいま九十代のスタートなんです。
あと何年でお迎えがくるのかしりませんが、初めてのことなんです。
「九十代」は初体験です。

自由は、命懸けのこと。

群れない、慣れない、頼らない。
これが私のモットーです。

現状を維持していれば無事平穏ですが、
新鮮な感動からは見捨てられるだけです。

ほかの人といて感じる寂しさ、感性の違う人に接するつらさに対して、自分
の気持ちをごまかさないでいられるひとり暮らしという選択もあっていい
と思います。「自分」は「ひとり」しかいないんですから。私はひとりでもの
を考え、怠け、喜びや悲しみを確かめたいと思い、その暮らしを続けること
を望みました。

私はこれまで、自分の人生で大事なことは人に相談をしたことがありません。
だって、だいたいのことは「いけない」といわれるに決まっているんです。
自分が本当に「やる」と決めたら、どんなに大変でもやらなければなりま
せん。自分がやりたいんですから。

反省なんてしたらダメなんです。反省したら前のところに留まってそこから
上には行けないのです。反省は、失敗したことを叱るお説教みたいなもので
すから、これから進む前に戻れということになるわけでしょう。

反省なんかしないで、自分のことを「バカ!」って叱るのがいちばん。
バカでいたくなければ、自分で何とかするでしょう。

人に屈服しないためには、闘わなければなりませんが、私は闘うのが嫌いです。
そうなると、脱走するしかない。こんな子供じみた解決をする自分を恥じ
ながら、私はその後も、「闘わず屈服せず」という姿勢で、生きてきてしまい
ました。

死は、人間に課せられた一度きりの初体験であり、誰の真似もできず、誰の
助けを借りることもできない。私がこれからどのような過程で死を迎えるの
か、私は私の成行きを眺めるつもりである。