2018-01-01から1年間の記事一覧

終世めとらぬわが兄ー塚本邦雄・百珠百華ー

獨身と既婚が浄・不浄を分つ基準にならぬことは自明であらうに、人は前者に、うちつけにカトリックの神父などを聯想して、生涯不犯を神聖視する。神父の大本山ヴァテイカンが世界一の春画の寶庫ときけば、そのあらたかさもけし飛ばうし、そのかみの免罪符売の…

萬歳の声ー塚本邦雄・百珠百華ー

あの掛声が悪寒を催すほど嫌ひだ。強ひられた合唱の一瞬も、私は唇を動かすのみで、心中は他の呪を繰返している。……私は戦争中の「萬歳」には、なにゆえか「犯罪!」に濁点を加へたやうな気がしてならぬ。……新婚の二人が旅立たうとするのを、嫉妬と羨望と憐…

紅葉狩りとアルベール・カミユの言葉ー天声人語2018/10/31ー

こぞって紅葉狩りに出かけるのは、日本ならではかもしれない。しかし美しさをたたえる気持ちはどこにでもあるのだろう。フランスの作家アルベール・カミユが残した言葉がある。「秋は2度目の春であり、すべての葉が花となる」

イチョウのたくましさー天声人語2018/10/31ー

円地の言うたくましさは、原始から変わらぬ姿に由来するのかもしれない。イチョウは2憶年ほど前から地球に存在しており、「生きた化石」とも言われる。あの扇のような形の葉に、原始植物の特徴が残っているという……かつては「銀杏」ではなく「公孫樹」の字…