歌人・穂村 弘の慧眼ー作家の口福(朝日2015・04・04)

私はふだん新聞や雑誌で短歌投稿欄の選者をしている。そこに送られてくるたくさんの短歌を眺めていると、いりいろと気がつくことがある。例えば、旅の歌や孫の歌はたいていあんまり面白くない。読者よりも先に作者のほうが感動してしまっているからだ。いちばん面白いのは飲み物や食べ物の歌である。誰にとっても毎日のことでありながら、嗜好や体験が一人一人異なっている。「あるある」と「え、ほんとに?」という両面の面白さを味わえるのだ。(カレーの歌 みんな食べる みんな違う)