外科医はまどろみぬ新しき血痕をゆめみむためー塚本邦雄・百珠百華ー

手術台上で流された鮮血は、空気に触れた瞬間に古ぶ。その危い鮮度を鋭く察知せぬ者には、この「新しき血痕」の無慚な美しさは、到底理解できないだらう。血を見ることへの恐怖は、女性においては、男性よりも遥に薄く、麻痺しているとも言はれる。「流血の惨」をわが身に、それも健やかな生の證として経験しているからであらう。