脈博の上にかさなり刻みいる時計OMEGAの小月面ー塚本邦雄・百珠百華ー

腕時計の盤面を「小月面」と見たこの眼の、底知れぬ視力ゆえに、今一つの腕時計をも亦「星なる時計」として、畏れかつ愛したのであらう。男子らが犇めきあふ理由も、その、掌中に収め得る小惑星としての時計の、めくるめく、かつ痺れるやうな宇宙感覚ゆえであらう。これらの時計詠、佐美雄の一首を例外とするなら、空前の、不思議な発想であらう。時計の内部のメカニズムをそのまま、人身大のオブジェに設へたものが、ジュネーヴ空港のロビーに飾られている。そこからは地球の滅びが見えるのだらうか。