栽培植物・家畜・花弁・微生物ー中尾佐助(栽培植物の世界)ー

 栽培植物は人間の意識的保護のもとに生長している植物であると定義できよう。動物界でもほとんど同様で、そこには栽培植物に対して家畜という存在がある。キンギョやカナリヤなどは普通は家畜のなかに数えない人が多いが、家畜の意味を広義にとれば、こんなものも含まれてよいはずである。キンギョやカナリヤを家畜のなかから除外すれば、植物界では当然、栽培植物から花弁を除外せねばならないことになって、ちょっと不便である。

 最近になって、高度工業社会のもつさまざまな欠陥に気づいてみると、自然のもつ意味がいろいろ見直されはじめてきた。緑化や自然保護が大きく叫ばれるようになった。そういった傾向のなかで、……日本において愛玩動物や花弁、緑化用樹などの育成が産業として経済的価値を高めている。……オランダなどでは、花弁の生産金額は、蔬菜のそれをこえる状態になっているという。

 このほか栽培植物の範囲で問題になるのは、微生物である。各種発酵食品に使用される菌類、抗生物質生産菌、あるいは石油蛋白生産菌といったものの登場である。これらの生物が人間の意識的保護のもとで生育し、その品種改良が積極的に人為的に行われているところなど、栽培植物や家畜の場合とまったく同じである。だから論理的にみて、これら微生物を栽培植物あるいは家畜のカテゴリーのなかに入れるのが当然だという結論になる。