栽培植物&雑草&野草ー中尾佐助(栽培植物の世界)ー

 栽培植物が人類の最も重要な文化財であるならば、植物界にはそれに準じた大きな存在が一つ見られる。それは雑草である。雑草と野草とはどう違うかというと、その第一点は、雑草は人間のつくった環境に生じるということだ。畑とか道ばた、空閑地といったところに生育し、自然林や自然草原のなかには侵入しない。しかし人間が自然をこわしたりすると、その跡にはすぐ侵入してくる。雑草は、いつも人間の助けをかりて生育しているものだということができる。

 空閑地の雑草を毎年除草していれば、毎年そこに雑草が生じる。しかし空閑地の雑草をそのまま放置しておくと、雑草群落は年々徐々に変遷していき、日本などの気候条件下ではついには樹林になってしまい、雑草はまったく見られなくなってしまう。つまり自然の状態では、雑草は生育できなくなる。人間が自然をこわした部分だけが、雑草の生ずる場所である。

 こうした生育地のできる現象は、人間の文化的活動の余波であると説明することもできる。つまり雑草は人間文化にたよって生育している植物で、その意味では栽培植物の性格と一部共通していることになる。栽培植物の種類やその起源をこまかくしらべていくと、雑草と栽培植物の堺が不明確な場合が相当たくさん出てくる。