人生とはその人の回想である

斉藤 学「封印された叫びー心的外傷と記憶」

ある人の人生とは、その人の回想のことである。個々の記憶の内容が、前後関係を位置づけられて並んだものが、その人の人生であり、つまり自分自身である。

その人の記憶はその人の現在の必要を示す。……記憶は、その日々に変わる必要に沿って日々につくられる。……忘却もまた、その人の必要に沿って生じるものであろう。母を忘れた人は、その人の現在の必要に沿って母を忘れるのである。