女にとって「失われた母語」ーフリーク上野千鶴子ミドナイト・コールー

E.M.シオランというルーマニア生まれの亡命作家がいる。パリに移住しフランス語で著作活動をした。外国語で自己表現するほかないつらさーわたしには、この亡命作家の嘆きがよくわかる。女の状況も似たようなものだからだ。自分を語ろうとすると、その言葉はすでに、男仕立ての意味や論理で汚染されている。その上、シオランより悪いことには、女にとって、「失われた母語」がどんなものか、誰にも痕跡さえわからない。