馬鈴薯の隠れた凶器ー異国美味帖(塚本邦雄)ー

あの、日常不可欠の馬鈴薯にも隠れた凶器がある。春になると薯の凹みから出る「芽」がそれである。これにはアルカロイドの一種ソラニンが含まれ、誤って食べると眩暈あるいは嘔吐を催す。馬鈴薯が種族絶滅に抗する非常手段の一つとも考えられる。

水ー異国美味帖(塚本邦雄)ー

日本の水道の水で不足を洩らしている人々でも、たとえば欧州ラテン諸国を歴訪するともっとげっそりする。……。何しろ、彼らは、水の代わりに葡萄酒を飲むので、水はシャワー用、掃除用くらいにしか考えていないのだ。水を欲しがるのは、日本人とアメリカ人と…

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パリでレモン・テイーをー異国美味帖(塚本邦雄)ー

パリでレモン・ティーを飲もうとしてレモンを頼んでも、知らない振りをする。「シトウロン」と言わないと一日待とうと二日待とうと持って来てはくれない。 ところが、シトロンとレモンは全然別の柑橘である。学名がキトゥルス・メデイカで医薬用に用いた品種、レ…

西瓜嫌悪症ー異国美味帖(塚本邦雄)ー

西瓜が嫌いである。大嫌いで、隣々々席から漂って来る匂い(臭い)にも、食欲を喪失する。ものごころのついた頃から、かたくなにこれを拒み、五人の家族から一人だけ離れて、西瓜の饗宴の席では真桑瓜などあてがわれていた。親族に一人、母の弟にあたる人物が…

「制度としての退官」ー梅棹忠夫ー1993年6月(朝日新聞)

梅棹は「退官」を民族学で用いる「王ごろし」の現象になぞらえており、「王ごろし」とはアフリカその他でみられた慣行で、フレイザーの『金枝篇』にくわしく出ている。それは「神聖なる王の弑逆」と称され、基本的事実は、王がすこしでも衰弱のきざしをみせると、容…

感動コンテンツに毒された社会

堀越英美著『不道徳お母さん講座』への寺尾紗穂の書評のタイトルに刺激されたエッセイである。そういえばTV番組に¨感動コンテンツ番組¨がいかに多いことか。「クールジャパン」、「和風総本家」、「人生の楽園」、「世界!ニッポンに行きたい人応援団」、「…

脈博の上にかさなり刻みいる時計OMEGAの小月面ー塚本邦雄・百珠百華ー

腕時計の盤面を「小月面」と見たこの眼の、底知れぬ視力ゆえに、今一つの腕時計をも亦「星なる時計」として、畏れかつ愛したのであらう。男子らが犇めきあふ理由も、その、掌中に収め得る小惑星としての時計の、めくるめく、かつ痺れるやうな宇宙感覚ゆえで…

火葬女帝持統の冷えししらほねはー塚本邦雄・百珠百華ー

銀壺の中の白骨が鳴った。がさごそと鳴つたらうか。二上山の方角から腥い風が吹かなかったのが、せめてもの幸、この怖るべき野心家の骨は鐵の壜にでも格納して地中深く埋めておくがよい。せめてもの幸は今一つ、思ひに思つて位を譲つた軽の皇子文武帝が、五…

外科医はまどろみぬ新しき血痕をゆめみむためー塚本邦雄・百珠百華ー

手術台上で流された鮮血は、空気に触れた瞬間に古ぶ。その危い鮮度を鋭く察知せぬ者には、この「新しき血痕」の無慚な美しさは、到底理解できないだらう。血を見ることへの恐怖は、女性においては、男性よりも遥に薄く、麻痺しているとも言はれる。「流血の…

「永世、中立」−塚本邦雄・百珠百華ー

中立、言うは易からう。だがこれを保つのは、綺麗事では済まない。永世中立のスイスは、国民皆兵の掟がある。二十歳から五十歳までの男は、年齢に応じて、一定期間の軍事訓練を受けねばならず、彼らは常に自宅に銃器と弾薬を備えておく義務を持つている。あ…

終世めとらぬわが兄ー塚本邦雄・百珠百華ー

獨身と既婚が浄・不浄を分つ基準にならぬことは自明であらうに、人は前者に、うちつけにカトリックの神父などを聯想して、生涯不犯を神聖視する。神父の大本山ヴァテイカンが世界一の春画の寶庫ときけば、そのあらたかさもけし飛ばうし、そのかみの免罪符売の…

萬歳の声ー塚本邦雄・百珠百華ー

あの掛声が悪寒を催すほど嫌ひだ。強ひられた合唱の一瞬も、私は唇を動かすのみで、心中は他の呪を繰返している。……私は戦争中の「萬歳」には、なにゆえか「犯罪!」に濁点を加へたやうな気がしてならぬ。……新婚の二人が旅立たうとするのを、嫉妬と羨望と憐…

紅葉狩りとアルベール・カミユの言葉ー天声人語2018/10/31ー

こぞって紅葉狩りに出かけるのは、日本ならではかもしれない。しかし美しさをたたえる気持ちはどこにでもあるのだろう。フランスの作家アルベール・カミユが残した言葉がある。「秋は2度目の春であり、すべての葉が花となる」

イチョウのたくましさー天声人語2018/10/31ー

円地の言うたくましさは、原始から変わらぬ姿に由来するのかもしれない。イチョウは2憶年ほど前から地球に存在しており、「生きた化石」とも言われる。あの扇のような形の葉に、原始植物の特徴が残っているという……かつては「銀杏」ではなく「公孫樹」の字…

文科省の天下りなんて可愛いらしいものですよ。

他の省庁の天下りは1ヶ月を1年とする退職金ですから、3年もつとめれば勤続36年分の退職金がもらえるのです。しかも“渡り"と称して天下りを2回ないし3回くりかえすのですから、文科省の天下りは1年を1年とする退職金で、"渡り"がほとんどないのとは…

高校野球の“連投”を、ただちに禁止せよ

メジャーで長続きしなかった松坂、故障がちなダルビッシュと田中、いずれも甲子園で連投した投手たちである。野茂がメジャーで長く活躍できたのは、甲子園に出られなかったからであろう。甲子園で怪物といわれた江川がプロに入ってからは、それほどでなかっ…

相模原障害者施設殺傷事件のような事件は、これからますますおきる。

広い意味で障害者である高齢者がどんどん増えるからである。 自公政権が、後期高齢者をいままでの国民保険などから脱退させ、後期高齢者医療制度という後期高齢者だけの独立保険に組みいれた。他の世代に迷惑をかけぬように、姥捨て山にプールしたというわけ…

文部科学省が「放射線量を低く見せろ」

福島県内オンライン線量計の「放射線量を低く見せろ」という文部科学省の要求を拒否して解約された“アルファ通信”は、30億円の赤字で破産した。(2014/11/19/ 朝日新聞)

①「プルトニュームは飲んでも問題なし」&②「放射能の影響はニコニコ笑っている人には来ない」

①は、大橋弘忠・元東電社員の現東大教授の発言であり、②は、山下俊一・長崎大学副学長兼福島県放射線健康リスクアドバイザーの発言であるから、あきれ果てて、なんとコメントしてよいかわからない。

舛添さん、腰のリハビリには、知事室附設の豪華浴室を利用されてはいかがでしょうか。

東京都庁舎ができた当初、都知事室に豪華な専用浴室が附設されていることが話題になったと記憶していますが、もし今もあるのであれば、舛添知事の股関節リハビリ目的も兼ねて公用車で毎週、別荘に行くという弁明はなりたたなくなるし、それに第一、車での長…

TV安倍&日本国営放送?

テレビ朝日が衆議院解散後の昨年11月24日に放送した「報道ステーション」でのアベノミクスに関する報道に対し、自民党が「公平中立な番組作成」を要請する文書を出していた。要請書は自民党の福井 照・報道局長名で『アベノミクスの効果が大企業や富裕層のみ…

向田邦子語録(1)ー霊長類ヒト科動物図鑑ー

【やわらかな矜持】崩れそうで崩れない、やわらかな矜持がある。味噌にも醤油にも油にも馴染 む器量の大きさがあったのである。(豆腐) 【持ち重り】持ち重り:置いた感じからカステラかしら、持ち重りのするところをみると羊羹か な、揺らさぬようにそっと置…

「山本夏彦・名言集」抜粋①

あれ、老衰の兆なんですよ。年をとってから一番避けなくちゃならないのは、人生の師匠になりたがることと説教すること。年とったからって自動的にひとの師匠になれるなんて、とんでもない誤解ですよ。(意地悪は死なず)先生ぐらい意地悪なものはありませんよ…

歌人・穂村 弘の慧眼ー作家の口福(朝日2015・04・04)

私はふだん新聞や雑誌で短歌投稿欄の選者をしている。そこに送られてくるたくさんの短歌を眺めていると、いりいろと気がつくことがある。例えば、旅の歌や孫の歌はたいていあんまり面白くない。読者よりも先に作者のほうが感動してしまっているからだ。いち…

向田邦子の修辞学ー霊長類ヒト科動物図鑑ー

女が地図を描けないということは、女は戦争が出来ないということである。敵陣の所在も判らず、自分がいまどこにいるかもおぼつかないのだから、ミサイルどころか、守るも攻めるも、出来はしない。そのへんが平和のもとだと思っていたのだが、地図の描ける女…

『笑う子規』 正岡子規・著 /天野祐吉・編/南 伸坊・絵

俳句はおかしみの文芸です。 だいたい、俳句の「俳」は、「おどけ」とか「たわむれ」という意味ですね。あちらの言葉でいう「ユーモア」に近いものだと思います。 柿くえば鐘が鳴るなり法隆寺子規さんのこの句を成り立たせているのも、おかしみの感情です。「柿を食べ…

『笑う子規』 正岡子規・著 /天野祐吉・編/南 伸坊・絵

俳句はおかしみの文芸です。 だいたい、俳句の「俳」は、「おどけ」とか「たわむれ」という意味ですね。あちらの言葉でいう「ユーモア」に近いものだと思います。 柿くえば鐘が鳴るなり法隆寺子規さんのこの句を成り立たせているのも、おかしみの感情です。「柿を食べ…

安倍の靖国参拝!

米議会図書館の議会調査局は、日米関係についての最近の情勢を分析した報告書を公表した。…中略… 20日付で公表された報告書によると「米国の助言を無視して突然、参拝したことで、日米間の信頼関係を一定程度損ねた可能性がある」などと指摘。安倍首相の歴史…

草も木も、みんな泣きよります一水俣病胎児性患者の存在を立証した、原田正純さんを悼む一

原田さんは、企業・医学界・行政・司法を相手に、水俣病患者によりそい、支え続けた方で、二人の小児患者をもつ母親から「おこられて」、胎内には毒物がはいらないという医学界の当時の定説を覆した人です。水俣育ちで、『苦界浄土一わが水俣病』の作者、石牟…